2016年7月25日月曜日

とと姉ちゃん(97)東堂との再会~「あなたの暮し」第二号の特集は「住まい」

昭和二十二年初夏 

<創刊号は直線裁ちのヒットで3万部を超える売り上げを達成し
販売部数の増加に伴って経理の経験を買われた水田が正式に入社 
もう一人庶務担当として岡緑が加わりました> 

緑(悠木千帆)「社長、日程表ですご確認下さい」 
常子(高畑充希)「もう…緑さんまた社長って」 
緑「ぁ…ごめんなさい…常子…さん」(笑顔) 
常子「はい、フフフ…ありがとうございます」 
緑「あのう…それと…今、花山さんの部屋に入っても大丈夫ですかね?
進行表の件でご確認を頂かないと」 
常子「怖いなら一緒に行きましょうか?」 
緑「是非!」 

2人が編集長室に入ると花山(唐沢寿明)は知恵の輪を解いている
常子「やっぱり…」
花山「何だ?そのあきれ顔は…これは説明したように…」
常子「はいはい、頭の中を整理されてるんですよね」
花山「ならとやかく言うな」
常子「言ってませんよ」
花山「言いたそうな顔だったんで先手を打ったんだ」(と可笑しそうに笑う)
目を剥く常子「はぁ~」 そしてあきれて目がクラクラしたといった表情になる
緑「あの…進行表のご確認を…」
花山「そこへ置いておいてくれ、後で見る」
常子「…(緑に)行きましょう」
緑「はい」
花山「待ちなさい」
常子「何ですか?」
花山「君ではない、緑さんだ」
緑「えっ?」
花山「あなたはどんな家に住んでいる?」
緑「あの…普通の家ですが?幸い空襲でも焼けずに」
微笑む花山「それは何よりだ」と、「そうか~…」と顔をしかめる
常子「どうしたんですか?突然」
立ち上がり部屋を出る花山
常子「は…花山さん?」
水田のデスクの前に立つ花山「水田君、君はどんな家に住んでいる?」
慌てて立ち上がる水田(伊藤淳史)「えっ…あ~今もバラックです」
デスクに身を乗り出す花山「何か困っている事はないか?」
水田「そうですね…あっ
最近壁の隙間から猫が入ってくるようになっちゃって
追い出そうか一緒に暮らそうか…」
なぜか電話の受話器を取り耳に当て
「そんなものがネタになるか~!」と大声で叫ぶ花山
水田「す…すみません」
花山「私が言っているのは広く世間にも通じる
住宅の悩みはないかと聞いてるんだよ!」
常子「ひょっとして次号の特集は 住まい ですか?」
花山「ああ、取り上げるべきだ間違いなく
誰もが皆、住まいへの不満を抱えている」

<終戦直後、国内の住宅事情は逼迫していました
空襲によって多くの家屋が焼失し
資材不足から12坪以上の住宅の新築・増築が禁止となり
狭い空間での生活を余儀なくされたのです>

美子(杉咲花)「あっ!」
花山「何だ?どんなアイデアだ?」
美子「あっ、いえ…知り合いからの手紙が」
花山「そんな事で声を上げるなぁ…」
美子「すみません…」
水田「どなたなんです?」
美子「それが…女学校時代のからの恩師でして」
常子「ひょっとして東堂先生?」
美子「そう」
笑顔で手紙をのぞき込む常子「あっ!…あ~懐かしい字」
鞠子(相楽樹)もやってくる「うん」

四日後

住所を頼りに家を探している常子
「桐野」の表札を見つける
木戸をくぐり庭の鉢植えをいじる女性に声をかける常子
「あの…こちらに…」
女「はいはい」と立ち上がり振り向く
常子「東堂先生…」
女・東堂(片桐はいり)「常子さん?会いに来て下さるなんて…」
常子「あの…近くまで仕事で来たので会いに来てしまいました」
東堂「日曜日もお仕事?大変ねえ…少しはお話しできて?」
常子「ええ」
東堂「ではうちにお上がりになって」
常子「はい」
東堂「ただ…とても狭いので覚悟して下さい」
常子「広いおうちを建てられないのは存じ上げております
確か12坪以下でしたよね」
東堂「ええ…こちらのお宅はそうなのだけどうちは…こっちなの
こちらはうちの人の親戚のおうちでね
私たちはこの物置に住まわせて頂いているんです」
常子「あぁ…」

狭い部屋の中央には膳代わりの木箱が置かれ
隅には積まれた書籍と畳まれた布団
壁の隙間は新聞紙を重ねたもので塞いでいるようだ
隙間風が吹き窓が揺れる
盆に湯飲みを乗せた東堂が戻ってくる「驚いたでしょう?六畳しかないの
お台所もないからいちいち借りに行かなくてはならなくて…さあどうぞ」
常子「頂きます」
東堂「失礼しましたね、いきなりお手紙を送りつけて」
常子「いえ」
東堂「直線裁ちが気になって何気なくあなたの暮しを手に取ったんです
(積まれた本から「あなたの暮し」を手に取る)
そうしたら皆さんを見つけて…思わず筆を!ウフフフ」
うなずく常子「うれしかったです」
東堂「すばらしい雑誌だわ…とても私の暮らしに役に立っています
これは女性の友であり同志です」
グっときて少し涙目の常子「ありがとうございます
東堂先生に教わった挑戦する事の大切さを胸に奮闘しております
何事も女性だからといって恐れずに挑戦する事が大切です…
先生のあの言葉があったから
私は自分で出版社を起こそうと決意できたのだと思います
女性だからといって自分の中に境界線を引いて諦めてしまう事を否定し
背中を押して下さったからこそ今の私があります」
東堂「私は小さな穴を開けたにすぎません
その穴に種を埋め水をやり日の光を注ぎ育て上げたのは
あなたの周りの方々とあなたご自身よ」
少し照れたように笑う常子「先生は今も教師を?」
東堂「ええ、50になってもなお
…教職者には定年がありませんからね
このまま体の許す限りは続けたいと思っています」
常子「ではあと10年はできますね」
東堂「いいえ、50年です」
「フフフ…」と笑ってうなずく常子
東堂「アハハハハ…こんなに楽しい時間は久しぶりだわぁ
いつもはうちの人と2人きりだから」
常子「今日はご主人は」
東堂「ええ、仕事で」
常子「確か書道家をなさっていると聞きました」
東堂「ええ…はい…
こうやって常子さんに来て頂くなら
愛着のあった駒込のおうちにおいで頂きたかったわ
たまにたてていたお茶のお道具や季節ごとの掛け軸なんて
高価ではないけど好きな小物がいろいろあったのよ
居間の一角に私の机があって廊下の一面が書棚になっていてね
居心地のいい家だったの
でも何もかも焼けてしまって…
まさかこんな暮らしになるなんて…」

事務所に戻り晴れない顔で席に座る常子
「お帰り」と花山が部屋から出てくる
常子「今日はお休みでは?」
花山「いい構図が浮かんだ
一気に表紙を描いてしまおうと思ってね」と常子にイラストを手渡す
その商店街を描いたような絵を見て微笑む常子「いいですね…
知恵の輪ではなくお仕事をなさっている花山さんはすてきです」
花山「知恵の輪も仕事の延長だ」
常子「分かっております」
花山「で…どうだった?原稿は受け取れたかい?」
常子「ええ一応…実は…知り合いの家に寄ってきたんです」
花山「先日の恩師か?」
常子「はい、空襲で焼け出され六畳の物置に2人でお住まいでした」
花山「物置?」
常子「先生は明るく振る舞って下さいましたが
やはり以前とは何か違うような気がしました」
花山「誰もが今、生活に追われている
次号もそういった人たちに役立つものにしたいのだが…」
常子「ええ」

夜、小橋家
小さな椀に入れたうどんを食べている一家
美子「いいなあ…東堂先生のお宅、私も行きたかった」
鞠子「そうよねえ、抜け駆けして」
常子「ごめんね、急に思い立っちゃって」
君子(木村多江)「先生は?お元気でした?」
常子「…はい、お変わりなく」
鞠子「旦那様は?どんな方だった?」
常子「あ~お仕事に出てらしてお会いできなかったの…
でも次はお会いできるかな」
鞠子と美子「えっ?」
常子「あっ、次の日曜日にね、お招き頂いたの
よかったら鞠子さんも美子さんも是非って…空いてる?」
鞠子「えっ、行きますとも」
美子「うんうんうん」

チヨの夫・東堂泰文(利重剛)が戸を叩く
「お帰りなさい」と戸を開けて迎える東堂
「今日は風が強かったですね、お寒くありませんでした?」
泰文「ああ」
泰文の肩にかけたカバンをとろうとする東堂に泰文「ああ、いい」
泰文は右手が不自由なようだ
元気なく座り込む泰文と夫を心配そうに見つめる東堂

<このチヨとの再会が
「あなたの暮し」の新企画へとつながっていく事になるのです>

談笑する小橋一家
美子「少し緊張する」
常子「そうね…そうね」
鞠子「何話したらいいかしら?」

(つづく)

終戦から2年たって常子たちはもんぺ姿じゃなくなってスカートをはいてたね

緑役の悠木千帆さんてどこかで聞いた名前だと思ってウィキで調べたら
樹木希林さんが昔使ってた名前を巡り巡って引き継いだみたいだ

花山は変なところで笑いだしたり受話器をつかんで叫んだりとやりたい放題
この前のスタジオパークに出演していた唐沢や伊藤の発言から
これらはほとんどアドリブなんじゃないかと思う
(94話の写真撮影のシーンで花山が「踊りたまえ」と言い出したのは
アドリブだと伊藤が語っていた、実際に踊ったりもしたがカットされたらしい)

水田の猫のエピソードはかわいすぎるだろっw
水田はどんだけ人が良くて優しいんねん!?

泰文は書道家なのに右手が動かなくなってしまったんだね
だから元気がないのかな?
ラストは寂しい東堂家と明るい小橋家が対比するように描かれたけど
焼け出された人と家が残った人
いち早く生活を立て直せた人とそうでない人
そして体と心に大きな傷を負ってしまった人
戦後はいろいろな境遇の人がいたのだろうね
(今でも地震の被災者などはそうなのだろうが)

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