2016年7月26日火曜日

とと姉ちゃん(98)恩返しと雑誌の企画も兼ねて東堂の家を模様替えする事になる常子たちだが…

雨の中、傘を差した3姉妹が東堂の家を訪ねる 
泰文(利重剛)「どちら様?」 
常子(高畑充希)「突然すみません、あの…
私たち東堂先生にご指導頂いていた小橋と申します 
東堂先生にお招き頂いたのですがご在宅でしょうか?」 
泰文「チヨが招いたのかい?」 
常子「はい、もしよろしければと」 
泰文「そう…あいにく買い物に出てまだ帰ってないんだ」 
常子「でしたらまた改めて出直します、失礼しました」 
泰文「あっ、待ちなさい…この雨だ、入りなさい」 

タイトル、主題歌イン 

雨漏りを受けた器に水滴が落ちる
東堂を待つ常子が天井を見上げている
と、「ただいま帰りました…あら」と東堂が戻る
鞠子(相楽樹)と美子(杉咲花)「先生!」
東堂「もういらしてたのね」
鞠子「はい、つい先ほど」
東堂「ごめんなさい、お茶うけを買いに出たらいいものが手に入らなくて
枇杷ぐらいしか(と木箱に包みを置き)お久しぶり!」
鞠子と美子「お久しぶりです」
東堂「随分おきれいになられたわね皆さん」
美子「そうですか?」
東堂「さぞ殿方に言い寄られるでしょうに」
常子と美子が鞠子を見る
鞠子「いえ、そんな事…」
美子「嘘です、今まり姉ちゃんに思いを寄せている方がいるんです」
東堂「あら!」
と、部屋の隅に所在なさげに立っていた泰文が「チヨ、いいか?」と
東堂を外に呼び出す

戸の外で泰文「どうして呼んだんだ?
こんな家、人に見せられたものじゃないだろ」
東堂「ごめんなさい」
泰文「寝床と居間が一緒になったようなこんな場所
恥ずかしいと思わないのか」
東堂「…ずっとそう思ってどなたもお呼びしてきませんでした
でも私たちの住まいはもうここしかないんです
それならば受け止めて…」
傘を取った泰文が歩き出す
東堂「どちらへ?」
泰文「散歩だ、こんなとこ5人でいたら息が詰まるだろ」

部屋に戻った東堂「ごめんなさい(と入口の戸に振り向き)
この薄さじゃ全部聞こえてしまったわね
もともとはああではなかったのよ、社交的でお仲間も多くてね
それが戦地で負傷して右手が動かせなくなってしまってからは
書道の方も続けられなくなって随分変わってしまったわ
その上、家も焼けてしまいここに住む事になってから
どなたもうちにお呼びしなくなってね」
鞠子「それなのにお邪魔してしまって…」
東堂「いいの…私もこのままでいいとは思っていませんでしたから
なんとかふさぎ込んでいるあの人を明るく変えたいわ
挑戦よ挑戦」
美子「いいですね、いずれお友達を呼ぶお気持ちになれれば」
東堂「それならお友達よりまず2人の時間を増やしたいわ
以前は時間さえあれば2人していろんな話をしたの
あの人がお茶にしないか…って声をかけてくれて
お茶菓子を頂きながらその日にあった事を報告し合ってね」
鞠子「すてきですねぇ」
東堂「そう、すてきな時間でした…
でもここに住むようになってからは2人でいる事がほとんどなくて
このお部屋居心地が悪いみたいで今日みたいにすぐ出かけてしまうの」
美子「じゃあまずは居心地のいいお部屋にするところからですかね」
東堂「そうね…でもこの狭さじゃ…フフフフ」

「どうしたもんじゃろのぉ…」と常子がつぶやく
事務所では一同が昼食をとるところ(うどん、じゃがいものふかしたもの他惣菜)
部屋から花山(唐沢寿明)が出てくる
「感心だな、昼休みでも時間を惜しんで企画会議か」
美子「あっ、いえ…」
鞠子「お世話になった恩師に何か恩返しできないか考えていたんです」
花山「おいおい…どうせ頭を使うなら
あなたの暮しで取り上げるべき題材を考えなさい!全く…」
常子「それでは頂きましょうか」
花山「よし、頂きます」
一同「頂きます」(礼をする)
と食事が始まるが何かを思いついたような花山「常子さん」
常子「はい」
花山「その恩返しだかを考えていたのはこの前話していた先生夫妻だよな?
六畳の物置に住んでいるとかいう」
常子「そうですけど…」
花山「さすがだな君たち」
常子「えっ?」
花山「ちゃんといいネタを探してきてるじゃないか!」

東堂家前
東堂「我が家の模様替えを?」
常子「はい、変化前と変化後のおうちを
雑誌の企画として掲載させて頂きたいんです」
鞠子「もちろん費用は全てこちらが負担します、お願いできないでしょうか?」
東堂が部屋の中の泰文に振り向く「でもこんな狭い家では…」
花山「この家だからいいんです!
このお宅のように今この国は満足な住居に住めない人で満ちあふれている
みんな狭い場所でどうにか耐えているんです
そのような環境で快適に暮らすための知恵を
ふんだんに盛り込んだ模様替えを提示できれば
これから家を新築・改築する際にも読者の参考になるはずなんです」
東堂「分かりました、そういう事ならお願い致します」
常子「お受け頂きありがとうございます」
東堂「さすが編集長さんですね(花山を見据える)
言葉の一つ一つに魂が宿っていて
心からの叫びという感じが伝わってまいりました」
花山「あっ…それはどうも」
常子が眉を上げて微笑む
美子「花山さんが照れるの初めて見た」
水田(伊藤淳史)が嬉しそうに「ええ」とうなずく
鞠子「東堂先生の前じゃみんな生徒になっちゃうのね」
常子「そうね」
と笑う一同に苦い顔の花山「ウ~ッ」
普段自分たちを振り回す花山がイジられて満足そうな常子
花山「早速拝見できますか?寸法など測らせて頂きたいので」

部屋の中
常子「あの…こんな部屋にしたいなどの希望はありますか?」
東堂「でしたら…本棚があるとうれしいわ」
常子「本棚…」(部屋の隅に本がそのまま積み重ねられている)
東堂「あの人、私以上に読書好きですから
それに…もし可能でしたら椅子と机が」
メモをとる常子「椅子と机…はい」
東堂「あの人、体がああですから座って読み書きするのもつらそうで…
椅子と机で生活できれば楽になると思うの」
常子「はい」
部屋の寸法を測る花山と水田

事務所
水田「本棚に机に椅子か…」
簡単な家具の模型を作り部屋の図面に配置してみる一同
常子「私、安請け合いしてしまいましたかね…」
鞠子「せめて本棚だけにして頂いたら?机と椅子はさすがに…」
常子「でもこれは先生がご主人のために…」
美子「でもこの3つ置いたら寝る場所が無くなっちゃう」
常子「そうだけど…」
花山「そこをなんとかできれば更に面白い企画になるな」
常子「そうですか?」(笑顔)
花山「だが無理難題だ」
常子「すみません…」
花山「よしっ、出かけてくる」
美子「妙案が浮かんだんですか?」
花山「気分転換だ、外の風にあたってくる」(と事務所を出る)
緑(悠木千帆)「花山さん、会社に戻ってきますかねぇ?」
常子「…だといいですけれど」

<しかし嫌な予感は的中しそれから3日花山は会社に姿を現しませんでした>

闇市の雑貨屋前(建材のマルキ)
鞠子「やっぱり家具を手作りするしかないのかしら」
美子「そうは言っても木材自体も高いんだから」
鞠子「そうよね」
水田「あっ!あの…これなんかどうですか?(と鞠子たちに椅子を指さし
店主に)これおいくらですか?」
店主「お目が高いねえ、こいつはアメリカ製で50円だよ」
眉をしかめた鞠子が水田の手を引っ張り場を離れる
「却下です、こんな高価なもの買える訳ないじゃないですか
もっと現実的に考えて下さい」
水田「あ…すみません」
そんな2人を見て美子が口を手で押さえて笑っている

<3日過ぎても常子たちは具体的な案が浮かばず…>

闇市を歩く常子がガード下の知恵の輪の露店の前にしゃがみ込む
花山を見つける「花山さん」
花山「お~奇遇だな」
常子「(もぅ…)奇遇だな…じゃないですよ
安くて使える家具はないかと手分けして探していたんです
今日も花山さんは会社にいらっしゃいませんし
もうこのくらいしか思いつかなくて」
花山「そうか…」(と知恵の輪を解いている)
常子「ひょっとしていつもここで知恵の輪を?」
花山「ああ、ここのは出来がいいんだ」
と、知恵の輪が解ける
花山「あ~ハハハハ!なあ!」
店主「お見事」
花山「どうだ常子さん!ハハハ!」
家具の事で頭がいっぱいでそれどころではない常子
花山「ところでお目当ての家具は見つかったかね?」(別の知恵の輪を手に取る)
常子「値が張るものでしたら…」(ガードの上を列車が通る)
花山「あぁ?」
常子(はっきりと大きな声で)「値が張るものでしたらまあ」
花山「読者が手に入れられるものでなければ紹介する意味はない」
常子「そうですよね…」
花山「それに買ったところで六畳の狭い部屋では活用できまい」
常子「そういう花山さんは何か思いつかれたんですか?」
と、店主に「また来る」と言って花山が立ち上がる
常子「もう…」

食堂のような店の前で突然立ち止まる花山
店横に積まれた木箱を手で探り「おい、おやじ!」
店主「へい」
花山「ここに置いてあるこの…この箱、売り物か?」
店主「あっ、これ?物がねえ時代だから何だって売り物だよ」
常子「これリンゴ箱ですよね、物を運ぶ時に使っていた」
花山「いくつある?」
店主「ああ、そうさなぁ…少なくとも30は」
花山「じゃあ30くれ!持って帰る」
店主「毎度あり!」
常子「花山さん?」
箱を立てたりして眺めている花山

<一体このリンゴ箱をどう使うでしょうか?>

訳が分からず箱と花山を見ている常子

(つづく)

東堂が泰文に常子たちの訪問を事前に告げず
雑誌への協力の件も泰文の許可なく決断してしまったのは不自然だが
泰文が明るさを取り戻すエピソードなのだろうから
お話しの流れ…みたいなものを優先させてこうなってしまったのだろう

東堂の言葉で花山が照れるシーンが面白かった
東堂も昔に戻ったように言葉が自信に満ちていたし
美子の「花山さんが照れるの…」からの流れが秀逸
鞠子のセリフもいいし何より常子の表情がいい

常子に関しては全編を通してまるで花山とビジネス上の夫婦のようだ
心の底では信頼しているのだろうが
とりあえずいちいち花山に対して腹が立ってしまう感じがよく表情に出ている
人間いつも一緒にいるとそうなってくるよねw

鞠子が50円の椅子を「こんな高価なもの買える訳ない…」と言ったのが
分からなかった
「あなたの暮し」は1冊50円で3万部売れたはずだし
常子が企画した講座の受講料は100円だ
この直前に物価の大幅な変動でもあったのだろうか?
ちなみに物語は現在、昭和22年初夏
新円切替があったのは昭和21年2月16日で1年半ほどが経過している


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