2016年8月11日木曜日

とと姉ちゃん(112)幸せの形は一つじゃない…結婚しなくても常子は一人前

玄関前で鞠子(相楽樹)と水田(伊藤淳史)を見送る小橋一家 
美子(杉咲花)「まり姉ちゃん、本当に大丈夫?」 
鞠子「うん」 
常子(高畑充希)「きちんと汽車で眠るのよ」 
君子(木村多江)「そうよ、昨日は寝てないんだから」 
鞠子「けど…汽車で寝て顔に寝跡なんかつけたら
お父様とお母様に失礼ですから」 
水田「そんなに緊張しないで下さい、もっと気楽に」 
鞠子「はい」 
常子「鞠ちゃん頑張って」 
うなずき合う一同 
水田「では行ってまいります」 
鞠子「行ってきます」 
3人「行ってらっしゃい」

タイトル、主題歌イン 

廊下を雑巾がけしていた君子が居間にやってくる
「まだ読んでるの?朝からずっとじゃない」
ちゃぶ台には何日かぶんの新聞が積まれている
常子「ええ、このところネタ集めする時間がなかったものですから」
君子「随分仕事熱心ね」
常子「いえ…本当は気を紛らわせているだけなんです
鞠ちゃんが認めて頂けたのかもう気になって落ち着かなくて」
縫い物をしていた美子「あっ、全て縫っちゃった」
(袋の口が閉じてしまっている)
君子「みんな同じね…私も家じゅうの掃除してやるとこなくなっちゃったわ」
美子「まり姉ちゃん遅いですね…甲府だったら中央線で3~4時間よね
(君子と常子がうなずく)そろそろ帰ってきてもいい頃なのに…」
常子「そうねえ…」
と、「ただいま帰りました」と鞠子の声が聞こえる
慌てて立ち上がり玄関に向かう3人

君子「お帰りなさい」
美子「遅かったね」
常子「どうだった?」
鞠子「それが…」
と、鞠子たちの後ろから水田を押しのけて水田の両親が現れる
國彦(筧利夫)「こんばんは~いっつも正平がお世話になってます
正平の父、水田國彦と申します」(たくさんの野菜を背負っている)
むめ(高橋ひとみ)「母のむめです」(こちらも荷を背負い包みを抱える)
うろたえる小橋一家
常子「あ…あ…あ…」
3人が廊下に座りそれぞれに挨拶をする
國彦「正平から鞠子さん紹介されてへえうれしくって
居ても立ってもいられなんでご挨拶に」
水田「すみません突然押しかけて」
常子「とんでもない事です」
君子「わざわざお越し下さいまし…
あっ!どうぞお上がり下さい!」と立ち上がる(かなり取り乱している)
國彦「ほうですか、じゃあ遠慮なしで」
むめ「ほうですか」

ちゃぶ台の上にお土産を並べる國彦「こりゃ地元の酒で
こっちゃあ今朝鶏が産んだ卵、ほれっからうちの畑でとれた枝豆と
それとキュウリと…てっ!蜂蜜はどうしただ?へえってねえじゃんけ」
むめ「やぁだよ~」
國彦「まさか…どっか飛んでっちまっただか?…蜂だけに」
「アハハハハハハ!」と爆笑する國彦とむめ
「やぁだよ、おとうさんったら!」
水田「いつもこうなんです、父の冗談で母だけが大笑いして」
鞠子「とても仲がおよろしいみたいで」
國彦「悪いじゃんね、蜂蜜忘れてきちまっとう」
常子「いや…こんなにたくさんお土産頂いてありがとうございます」
君子と美子「ありがとうございます」
國彦「こんぐれえなんのなんの!
ああ、鞠子さんから伺ったですよ
早くにお父様を亡くされただと?」
むめ「うんとご苦労されたずらねえ」
君子「いいえ、お心遣いありがとうございます」
むめ「ずうっとお姉さんの常子さんが父親代わりをなさってただってね」
常子「はい」
國彦「今正平が勤めてる出版社も常子さんが起こしたですよね?
立派ですなあ!」
常子「いえそんな」
國彦「わしは本心からほう思ってるですよ
ほれにお父様もうんとこさお喜びずらね(と仏壇の写真を見る)
会社を起こしてこぴっと生計を立ててらっしゃるこんもですけんど
鞠子さんみてえなきれいで立派なお嬢さんを
お母様と一緒に育てられたですから」
常子「ありがとうございます」
國彦「ふんとにてえしたもんだ
今わしが死んでも正平やこいつの兄貴に
父親代わりを任せようなんて無理ずらね!」
水田「ちょっと父さん!」
國彦「おまんにわしの代わりは無理ずら
ガキの頃から頼りなくってねえ
怒られるとすぐに泣きべそかいて寝小便なんて
十になっても治らなんだですから!アハハハハ!」
水田「勘弁してよ、鞠子さんの前で…」
鞠子「私は平気ですよ、小さい頃の正平さんがそうだったとしても
今はとても頼りになりますから」
國彦「てっ!正平がですか?」
鞠子「ええ、会社だって水田さんが経理を担当して支えて下さらなかったら
今頃倒産して私たち一家は路頭に迷っていたかもしれなかったんです」
水田「鞠子さん…」
むめ「こんなに優しい娘さん…ぜってえ手放しちゃ駄目だよ正平!」
國彦「手だけじゃねえだぞ、両手両足全部だぞ!」
爆笑する2人「ハハハハハハ!」
むめ「やぁだよおとうさん!」
一同も笑っている
笑い続ける國彦夫妻に君子「安心致しました」
(2人)「ん?」
君子「正直申し上げますと
鞠子をお父様とお母様に認めて頂けるかどうか心配しておりました」
國彦「認めるも何もこんねん立派なお嬢さんが
正平の嫁になってくれるだなんてふんとにうれしくて」
むめ「ほうですよ」
國彦「うちなんざただの田舎の百姓でごいずから」
鞠子「そんな事ありませんよ
あんなに大きなお宅、私初めて見ました」
美子「そんなに広いの?」
鞠子「うん、畑なんてうちから角の魚屋さんぐらいまではあったと思う」
常子「そんなに?」
國彦「てえした事はねえですよ
あれだって9割方手放したですから
村のやつらからは落ちぶれた長者様だって陰口たたかれてる始末で
これも時代が変わっただと思って受け入れてるですよ
なんぼでも昔の栄華みてえなもんに
しがみついていてもしかたがねえですから
ほれに常子さんなんか女の細腕で一から会社を起こして
社長として成功してるだから負けちゃあいられんですよ
…心底わしはホッとしてるです
いい年をしてフラフラしてたこいつが結婚だなんて…
結婚もできんような大人は一人前とは言えんですからね
子どもが結婚するまでは親は死んでも死にきれんですよ」
水田「いや…そんな大げさな」
國彦「親ってもんはな…みんなほう思ってるだよ
親の心子知らず…たあよく言ったもんだ
おまんも子どもができたら分からあ」
(常子が君子の方を見る、君子は複雑に微笑んでいる)
國彦「ほれでどっちがいいだ?おまんは」
水田「えっ?」
國彦「なんぼ欲しいだ?おまんは」
水田「ちょっ…ちょっと父さんここで?」

夜、寝間着姿の君子が仏壇の前に座っている
こちらも浴衣を着た常子がやってくる「結婚のご報告ですか?」
君子「ええ」
君子の後ろに座る常子「ととが聞いたら何とおっしゃるでしょう
ひょっとしたらやきもちをやいてしまうかもしれませんね」
(2人)「フフフ」
君子「そうねえ…少し戸惑うかもしれないけれど
喜んで水田さんを受け入れてくれると思うわ
それに娘が幸せになる事に反対する親なんていないわよ」
常子「…あ~ととにも見せたかったなあ
鞠ちゃんの幸せそうな顔…
好きな方に結婚を申し込まれる事ほど幸せな事はありませんものね」
常子を見つめる君子
常子「…かか」
君子「うん?」
常子「かかもやはり私に結婚してほしいですか?」
君子(笑って)「あっ…何?急に」
常子「いや、水田さんのお父様がおっしゃってたじゃないですか
子どもが結婚するまで親は死んでも死にきれないと…
結婚して巣立っていくのを見届けるまでかかも安心できませんか?」
君子「…私たちの世代はそう思う人がほとんどでしょうね…
私もできれば…あなたも美子も素敵な方と出会って
幸せに暮らしてほしいとは思っているわ」
常子が少し目を伏せる
君子「でもね、それはその方が安心だからという事じゃなくて
それが私に想像できる限界だからかも…
あなたを見ていると幸せの形は一つではないのかなと思うわ
結婚しなくても、あなたは十分に一人前です…それは確かよ」
膝を手で打って常子「これから大変になりますね
結婚式に向けて私たちもいろいろと準備しなくちゃいけませんから
すてきな結婚式にして鞠ちゃんを送り出してあげないと」
君子「そうね」
笑顔でうなずく常子

<夏に出版されたあなたの暮し第12号は
らいてうの記事が評判となり売れ続け秋には10万部を記録しました
そして…鞠子の独身最後の日>

緑(悠木千帆)「水田さん、ここの数字ゼロが1つ足りなくありませんか?」
「えっ?」と帳簿を確認する水田
「あっ、すみません…すぐ書き直します」
緑「これで3度目ですよ」
扇田「早くも緊張してるんですか?結婚式明日ですよ」
水田「別にそういう訳じゃ…」
笑う一同
緑「もう…しっかりして下さいよ」
向かい合って座る鞠子と水田が見つめ合い笑う
それを編集長室の入り口から見ている花山(唐沢寿明)
「何を見つめ合っているんだ」
(2人)「すみません!」
花山「常子さん、鞠子さん、美子さん、そこに並びなさい」
常子「え?」
花山「鞠子さんの最後の日だから三人の写真を撮る
三人そろってここで働くのは今日が最後だろ?」
鞠子「でも仕事中なのに…」
花山「嫌なら別に構わないがね」(と部屋に戻ろうとする)
(常子と美子)「あ~」
鞠子「お願いします、撮って下さい」
振り向く花山「並びなさい、早く!速やかに並んで」

花山「う~ん…もっと寄って!」
カメラの前に並ぶ3姉妹
常子「うまく撮れるかな…
私こういうの絶対失敗するから」
鞠子「そうよね、昔ととと一緒に撮った時も一人だけ変な顔して」
(桜の木の前で撮った家族写真・常子の左頬がふくらんでいる)
常子「あれはしかたないじゃない口内炎が出来てたんだから」
と、あの時のように舌を使い左頬をふくらませる
笑う3姉妹に花山「早くしなさい!私は仕事が詰まってるんだ!」
(3姉妹)「はい」
花山「表情が硬い、笑って!もっと!」
編集部の皆も笑顔で見ている
花山「作り笑いでいいから笑えよ」
常子「鞠ちゃんよっちゃん」
花山「いくぞ」
常子「ニコッ」
花山「はぁ…水田踊れ!」
水田「踊る?」
カメラの前に立つ水田に花山「かぶってるよ」
水田「あっ、すいません!」
笑う3姉妹に花山「おおいいぞ、そのままでいいぞ!見て!」
常子「はい」

<こうしていよいよ鞠子と水田の結婚を迎えるのでした>

額に収められた3姉妹が揃って働く最後の日の記念写真

(つづく)

國彦が最後に言った「なんぼ欲しいんだ?」は財産分与の話だろうか?
だとすればその前の「どっちがいいんだ?」は
現金がいいのか畑がいいのか…という事なのかな?

常子が最終的に誰かと結婚する事になるのかずっと気になっていて
個人的には星野と再会して結ばれてほしいと思っていたのだが
よく考えたらそのドラマ展開は常子のモデルの大橋鎭子さんに対して
失礼のような気がしてきた
大橋さんの人生を否定するようにもなってしまうからだ
女の人は結婚しないと幸せになれないのか?
結婚しない事は親不孝な事なのか?
今回のお話はそれがテーマだった
國彦は「親の心子知らず」という言葉を使ったが
君子は「素敵な方と出会って幸せに暮らしてほしい」と語りながらも
「それが私に想像できる限界かも…」という表現をした
これは時代は常に流れていて世の中はどんどん変化しており
その新しい社会を生きている若者の心の内(生き甲斐や価値観)は
年寄りには理解できない…という意味ではないだろうか?
「子の心の内、親には理解できず」といったところかな
なんだか常子が結婚しないラストの方がいいようにも思えてきた

ラストの写真撮影
直線裁ちの時の撮影と同じく
3姉妹を自然な笑顔にさせたのは水田だったね
唐沢も水田を踊らせるアドリブを重ねてきたw




 

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